衆議院総選挙について。現状分析とまとめ。

政治についてBlogで語ると炎上することが多いんですがねえ。
と思いつつ、まあ、みんなやってるからいいか、と書いてみる。
それが日本人クオリティw


とりあえず現状を簡単に整理してみよう。書き書き。

自民党

自民党小泉純一郎竹中平蔵

小さな政府・自由主義経済志向。
簡単なレッテルを貼ると、中道右派
キーワードは企業重視、自由競争推進、経済成長優先、所得格差拡大、社会保障削減など。

郵政事業の民営化によって

  • 公務員の人件費を減額し、政府の財政負担を軽くする
  • 財政投融資(簡単に言えば郵便貯金から特殊法人国債に流れるお金のこと)資金を断ち、政府の財政負担を軽くする
  • 巨額の郵便貯金・簡易保険資金を金融市場に流入させることで、企業の資金調達を容易にし、設備投資などを加速させる

ことを目指している(と思われる)。

自民党郵政民営化反対派

内部的には色々あって一枚岩ではないので一緒くたにはできない。が、大筋では小さな政府・自由主義経済の行き過ぎによる負の効果を懸念している(ようである)。日本の文化・伝統(といっても、その大半は明治期以降に確立したものだが)を重視する人も多いようだ。大きな政府志向?
具体的には民営化によって

  • 郵便事業(単純な小包や封書のほうね)を全国均一に行き届かせることができなくなる
  • 金融サービスを全国均一に行き届かせることができなくなる

ことを懸念している。

他に

  • 郵便局を中心とした地域コミュニティの崩壊を恐れている
  • 郵便局長からの選挙協力や政治資金協力(地方では街の名士が郵便局長になる場合が多い)を得るため

という理由を挙げる議員もいる。

民主党

実のところ自民党と同様、色々な議員を抱えているため、こちらも一枚岩ではない。郵政民営化自身の是非は先送りになっている。とりあえず郵政民営化の「自民党案」には反対。
党全体としては中道左派。小さな政府志向で、政府の歳出規模を減らそうという意味では、実は小泉&竹中派と同じ。しかし完全な自由競争ではなく、企業競争力をある程度は削っても、社会保障を手厚くしようという考え。

民主党郵政民営化賛成派

基本的には「自民党小泉純一郎竹中平蔵 派」と同じ。
ただし妥協を重ねた小泉案より、より大胆な民営化を志向すると思われる。というのも、今の政府は借金まみれなので、年金や社会保障拡充のためのお金を捻出するには、公務員の人件費削減が必要不可欠なので。

民主党郵政民営化反対派

基本的には「自民党郵政民営化反対派」と同じ。ただ「地域コミュニティの崩壊」などを恐れている議員は少なく、労働組合との協力関係維持がメインであるようだ。

(そういえば)なぜ全国均一?

短絡的には田中角栄以降の自民党の党是「国土の均衡ある発展」のため。


もう少し抽象的に見れば、国民国家の形成段階において、その均一化・一体化を保障するシステムが必要不可欠だから。

自画像・情報圏の一体化

具体的に明治期の日本人の大部分において「くに」とはせいぜい「藩」のことであり、日本のことではなかった。産業革命をおこし近代的な軍事力を備えるには、ある程度以上のリソース(人口や資源、土地など)が必要であったから、「では藩ごとにひとつの国ということで」みたいなのんびりとしたことは言ってられない。ということで、北から南まで、一度も会ったことがない人々の間でも、「我々は同じ日本人」である、という認識・一体感の形成が必要になった。このため、標準語や共通教育、新聞などに加えて、全国一律料金での通信システムが整備された。これが「郵便」である。これにより一人の人間がアクセスできる距離が飛躍的に伸びた。今までは隣接村落か、せいぜい同じ藩内までに制限されていたものが、「日本全国」まで伸びたのである。このような全国均一の通信システムは、その後、電信、電話と変化していった。電話も電信も最初は国有だったが、後に民営化された(NTTのこと)。

ということで、全国均一の低料金通信システムを確保するのは、国家にとっては大事なことなのである。少なくとも20世紀においては。21世紀については、まだ始まって5年しかたっていないので、良くわからない。

だが、当通信システムの主役は郵便から電話にすでに移り変わったし、さらにはe-mailなどに移ろうともしている。(完全移行はまだだろう。年齢によるデジタルデバイドがあるので。簡単にいうと、あなたの祖父母はメールをバリバリ使いこなせてます?ということ)現代では郵便だけが唯一無二の通信システムではないことには注意を要する。

経済的一体化

全国均一な金融システムが必要な理由は、簡単に言えばお金の流れをよくするため。現金で直接やり取りするよりも金融機関を通じた決済のほうが早いし安い(たとえば青森の部品会社と、鹿児島の組み立て会社が取引をする場合を考えてみればわかる)。また信用創造によって実際に市場全体に流れる額も大幅に増加する。この金融システムが一部地域にはないとすると――たとえば徳島県だけないとしよう(徳島の人ごめんなさい)。すると、日本のほかの企業は、徳島の企業と取引をするときには、そのためだけに現金を用意しなければならなくなる。この余計なコストを考えると、たとえ少々の赤字を出しても、徳島にも金融システムを構築したほうが、全体ではコスト削減になる。

注意としては、民間金融機関のシステムだけで人口の大部分をカバーできているということ。郵便貯金によって流される資金の大部分が、政府系機関によって使われていること、など。

まあ、いろいろありますが。

実のところ、郵政民営化だけを争点にするのは小泉さんの狙い通りではあるのですよね。まあ、その点はおいおい考えるにしても、自民・民主ともども違う考えの議員同士が同じ党にいるので、ややこしいことこの上ない。

しかし、議会政治の基本である「交換可能な政府を常にもう一つ作っておく」という理念からすれば、健全な状態といえるかもしれない。むずかしいね。

過度な単純化を求めるのは危ういものでもあるし。人間はクリスタルじゃないのだから。単純だから、強いというわけではない。