その3

「ふうん」セネカはそういって煙草をくわえる。「ライタ持ってる?」
「禁煙ですよ」
 二度目の忠告。
「だから?」
 セネカはその程度ではあきらめない。
 凪瀬は無言でポケットからマッチを出し、擦る。低温の炎がオレンジ色の可視光を発する。セネカは煙草に火をつけ美味そうに一口吸った。それでも禁煙者である凪瀬に煙をかけぬように注意しているようだ。
「いつ?」
 唐突な再開。
「ついさっき。午前三時ごろ」
「事故か?」
「いいえ。他殺。敵対宇宙人間の銃撃戦に巻き込まれたようで」
「ウチュウジン? スペース・デブリ?」
「いや埃じゃなくて……。ま、簡単に言えばエイリアンです」
「凪瀬、国民健康保険に入っているか?」
「もちろん。嫌々ですが」
「医者に見てもらえ。精神科医に保険がきくかどうか知らんが……」