新入社員はなぜ3年で辞めないのか?(ミスリード)

※ このお話はフィクションです。

幾多の災厄が詰まった「パンドラの箱
その箱を開けてしまったが故に、世界には災厄が満ちるようになったという。災厄が飛び散った後、箱に残った最後のひとかけ。それは「希望」とも「未来」とも言われている。


未来が、文字通り未だ来ていないものであることが、我々に残った最後の希望というわけだ。


日曜日の24:00。日曜日の終わりであり、月曜日の始まりであるこの時間、関東ローカルなU局で流れる深夜アニメを眺めた後、私はいつも眠りに落ちる。


「明日、仕事だから」そんな理由で眠りにつくようになってから、何年が経っただろう。7時45分の東急線に乗るため、毎日決まった時間に起きる。あれだけ朝が苦手で、学生時代は午前中の講義に出たことがなかった私も、そんな生活に慣れっこになった。電車はいつも混んでいて、乗客の半分は眠っていて、もう半分は携帯をいじっている。ブール代数なんて聞いたことのなさそうな女の子も、iPhoneで遠くの誰かとtwitterをしている。でもみんな、無表情だ。私と同じに。



月曜日。会社に行くと仕事がある。私は仕事をする。タフな仕事だ。タフだから、なんだと言われると、何でもないのだけれど。実際、私がそのタフな仕事をしなくても誰も困らないし(代わりに同じような仕事をしてくれる人は、世界中にいくらでもいる)、地球の運行に支障が出る訳でもない。ある種の技術革新には遅れが出るかもしれないが、それもせいぜい数年のことだ。人類全体から見たら大したものではない。結局、自己満足のためだ。それと、自分のお金で生活しているのだ、というささやかな誇りのため。



仕事が終わると、私は電車に乗る。儀式みたいなものだ。朝と同じように、半分は眠っていて、半分は携帯をいじっている電車。違うのは、朝より皆、ほんの少し疲れているということだけだ。

私は家に帰る。そして火曜日、電気がつけっぱなしの部屋で7時20分に飛び起き、7時45分の東急線に駆け込む。



人生という冒険は続く。