キャッチャー・イン・ザ・ライ風味


 マジかよ、と思った。
 みんな知ってるか?
 実は今までの人生は取り消せなくて、過去は変えられなくて、そんでもって僕は僕、君は君以外にはなれないんだ。え、なに。そんなの当たり前だろうって? 本当に? 本当に当たり前なら、よく平気な顔をしているな、おまえさ。
 冗談でもやり直せないんだぞ? いまのなし。と、いっても誰も聞いちゃくれない。
 

 そんな怖いセカイで、おい、おまえ、よくそんなセカイで、のんきにビール飲んでられるな。コンビニで買い物していられるな。テレビ見ていられるな。ネットやっていられるな。

 マジかよ、って思わないのか?

 それともなんだ。そんな感覚を持つのはゲームのやり過ぎだよ、みたいな、アホな理論武装でもしてるってのか?
 そんなの、何の役に立つって言うんだ?
 
 本当に取り返しがつかないことがおこったときに、その理論武装は何かを守ってくれるって言うのか?

 評論家ぶったってさ、おまえの今までの人生は取り消せなくて、過去は変えられなくて、そんでもっておまえはおまえ以外にはなれない。絶対に。



 なんだって絶望的な、なんだって扇情的な。
 
 

 マジかよ。としか言いようがないね。



 うーわって感じだね。


 死ぬ間際かさ、40くらいになってさ、
 
 あれ、これで終わり? えっと、マジ?

 ってなるぜ。たぶんさ。






 そ。
 気になって、でも結局日常に負けて、電話しなかったあの女と同じさ。


 感じの良い女の子に電話するより、ジャンプの立ち読みをする方がそんなに重要だったのかい?