novel 6/183
昨日、ハイになりすぎて歌舞伎町のどこかへ飛んでいってしまった先輩は、夕方には研究室にやってきた。とりあえず生きてはいたようだ。安心。嘘だが。いつも不機嫌そうな眼が、さらに細められているところを見ると、昨日の酒がだいぶ残っているようだ。
「サニィ。今日の自主ゼミはアンミラでやるから。ガオカの」
その不機嫌な先輩は、学生室に入ってくるなりそういって、ソファに横になる。
「いきなりですね」
冷静な突っ込み役を演じてみる僕。ケイのメールに触発されたのかもしれない。
「今日調子悪いからさぁ。アンミラで勉強すると、なぜかはかどるんだよ。俺」
もっとも、先輩に通じるとは思っていないが。
「僕はそうでもないですけど」
「ま、そういうことで。それと、今日はホットブラウニーを食べるから」
一方的な通告(たいていの通告はそういうものか)を終えると、先輩はソファで睡眠を始めた。ああ、僕も寝たかったのに。ガッデム。アンミラではボストンクリームパイを喰おう。そう心に決めてみた。