novel 3/183

深酒をした後の覚醒というのは、いつも唐突なものだ。今までの狂騒が急に遠ざかり、文字通り、醒める。冷淡な、投げやりな、そんな気持ちになるものだ。このときもそうだった。

気が付くと、僕は、カラオケボックスのソファで寝ていた。床には、自分で吐いたらしい胃液が拡がっている。頭が痛い。身を起こすと、ちょうどコの字になったソファの、僕から一番離れた端に、一人の女が座って、本を読んでいた。知らない顔だ。
「何、読んでるの?」
僕はとりあえずそれだけ聞くと、もう一度横になる。
「つまらないことを聞くな。キミ」
女は低い声でそれだけを返した。顔は見えなかったが、きっと、笑っていた。僕はそれだけを思い、もう一度眠った。

  • to be continued.